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本屋大賞

「本屋大賞」という賞を知っていますか?「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」をテーマに2004年から出来た新しい賞です。
私個人の感覚では、いま一番注目されている文学賞だと思います。この賞の一番の特徴は、現役書店員のみの投票で大賞が決まるということ。過去の受賞作品が「博士の愛した数式」「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」「夜のピクニック」と言ったら、聞いたことがある人も多いと思います。
今年も、10作品が決選投票に臨み、4月5日には大賞が発表されます。その前に、書店員でも何でもない私が全作品を読んだので、個人的にレビューを書いて大賞を予想してみます。本好きな方も、そうでない方もお付き合い頂ければ幸いです。



ホントは、こういう書き出しで本屋大賞候補作のレビューを書く予定でしたが、候補の10作のうち「失われた町」だけが予約した図書館から大賞発表日までに来なくて、企画倒れに終わりました。読みたい本は自分で買えってことですかね。考えてから2ヶ月もあったから大丈夫かと思ったんだけど甘かった。でも、どれも私の好みのラインの物語ばかりだったので、上位5作の感想を残しておきます。


■大賞 475.5点
一瞬の風になれ 第一部  −イチニツイテ−
一瞬の風になれ 第一部 −イチニツイテ−
著:佐藤 多佳子
出版社:講談社
ISBN:4062135620
発売日:2006/08/26
¥1,470


一瞬の風になれ 第二部 −ヨウイ−
一瞬の風になれ 第二部 −ヨウイ−
著:佐藤 多佳子
出版社:講談社
ISBN:4062136058
発売日:2006/09
¥1,470


一瞬の風になれ 第三部 −ドン−
一瞬の風になれ 第三部 −ドン−
著:佐藤 多佳子
出版社:講談社
ISBN:4062136813
発売日:2006/10/25
¥1,575


大賞は、だいたい予想通りでした。直木賞はダメだったけど、こちらでおめでとうございます。
陳腐な言葉だけど、等身大の少年少女を書くのがすごく上手かった。大人になるにつれ、子供のときの感覚を忘れて「大人に都合のいい少年少女」を造形してしまう作家が多い中で、「あ、これはありそうな会話」と「こういうモヤモヤは覚えが…!」と読んでいるときに何度も中高生時代を回顧した。3冊で高校生3年分の風が吹き抜けていった物語だったと思います。
が、私は物足りなかった!高校生の主人公が、陸上で天才の友人とサッカーで天才の兄に囲まれて陸上をする話で、3冊もあるんだから陸上の話も友人家族関係の変化も主人公の成長も、めいっぱい詰め込んであって、その一つ一つは面白いんだけど、そのエピソードの掘り下げ方が足りない印象。主人公が、二人の天才へのコンプレックスを持っている割には、それを発散しないで3巻終わっちゃったなあ、という印象でした。陸上は天才的だけど、競技に対する姿勢が真剣じゃない友人への「これでいいのか、こいつは」という描写が出てきて、伏線だ!と思っただけに、空振った気分です。もうちょっとドロドロしたものを期待していた私が悪かったのかもしれませんが。
あと、陸上競技のどの大会がどういう位置づけか、最後までよく把握できなかったです。競技描写もすぐ終わることが多くて、流すところとねっちり書くところのメリハリが欲しかったような。

■2位 455点
夜は短し歩けよ乙女
夜は短し歩けよ乙女
著:森見 登美彦
出版社:角川書店
ISBN:4048737449
発売日:2006/11/29
¥1,575


上位入賞間違えなし、という予想通り1位とは20点差のデッドヒートでした。森見登美彦は、去年で一気に名をあげましたね。
ストーカー的に一途な恋心を書かせたら、いま一番かもしれないと思った。こういう表現はどうかとも思うが「許せるストーカー」です。この主人公の行動は相当逸脱しているのですが、「つくりばなし」のオブラードで包んだら、こんなにも可愛くて切ないラブコメに!この変な話は読んで味わうのが、一番いいと思う。独特の不思議な世界観と小道具の使い方は、アニメにしたら色鮮やかで可愛いだろうなあ。

■3位 247点
風が強く吹いている
風が強く吹いている
著:三浦 しをん
出版社:新潮社
ISBN:4104541044
発売日:2006/09/21
¥1,890


2位とダブルスコアながら3位入賞。デビュー時から読んでた三浦しをんが、まさか直木賞作家になるとは…としみじみと思います。
「一瞬の風になれ」と同じ陸上でも、こちらは長距離、箱根駅伝。10人しかいないシロウトだらけの陸上部で箱根を目指す1年間。この時点で荒唐無稽さが伝わってくるあらすじですが、「リアルじゃなくたっていいじゃん!」と読者に思わせる強引さが持ち味です。そして、何より読んでて感嘆するのが描写力とそれを支える文章の上手さ。後半の箱根を走る場面は圧巻でした。美しい文章が読めて幸せだ。ああ、好き作家ということでちょっと贔屓目が入ってるのは承知の上です。

■4位 228点
終末のフール
終末のフール
著:伊坂 幸太郎
出版社:集英社
ISBN:4087748030
発売日:2006/03
¥1,470


伊坂幸太郎は、一時期まとめて何冊か読んだものの、好みと合わなくて止めてしまったのですが、これは好きだ。「あと少しで地球が終末を迎えるなら」という使い古されたテーマながら、読ませてくれる。何度もグッと来ました。上手いなあ。
敢えて言うなら、面白さよりも技巧部分が目について、ややあざとさは感じるかもしれません。読者が、どの登場人物に感情移入してどういうシチュエーションに心を打たれるか、よくわかって書いているのが伝わってくるのだ。読者の立場になる感性は、作家として非常に重要なんだけどね。あとは伊坂流のリンクした世界観を楽しめれば十分です。お腹いっぱい。

■5位 176点
図書館戦争
図書館戦争
著:有川 浩
出版社:メディアワークス
ISBN:4840233616
発売日:2006/02
¥1,680


発売直後から話題になってよく売れてた印象です。私の感想は「ラブコメだよこれは!」でした。有川浩の魅力は幾つもあるが、なぜか私の印象に残るのはいつも恋愛部分です。とにかく可愛いのだ。作者自身がインタビューで「胸キュン」と語る恋愛。大人の駆け引きじゃなくて思春期のような恋愛。相手のことをこんなに思っているのに上手く届けられなくてもどかしい恋愛。その味がここでも発揮されてました。余談ですが、サイン会に行ったときに6割くらいが男性でびっくりしたものの、よく考えるとこの可愛い恋愛は、むしろ男性に受けるものかもしれないなあ…。
作品としては未熟さを指摘したくなる部分も多いが、それを上回る「読ませる勢い」に魅了されて毎作一気読みしてしまう。エンターテイメント小説の面白さが全開になった作品です。

ユズシマ | 0 comments | edit

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